「自然に忠実であれ」。イギリスの美術評論家ジョン・ラスキンは、対象をしっかりと観察し、素描することで、ものの本質に迫ることができると考えました。その信念は風景画を刷新したターナーをはじめ、旧来のアカデミズムからはずれた若い芸術家たちを守り育て、やがて世界規模で広がるアーツ&クラフツ運動の芽生えを促すことになります。本展では、ラスキンに擁護された若いグループ「ラファエル前派」のロセッティやミレイらを軸に、次の世代にあたるバーン=ジョーンズやウィリアム・モリスらの、絵画や素描、貴重な書籍、彼らが共同制作したステンドグラス・家具など、バラエティに富んだ150点を展示します。次々と花開く19世紀イギリスの芸術と、人と自然が織りなすドラマをお楽しみください 。
誕生プレゼントの本にあったターナーの挿絵を、飽かず眺めたジョン・ラスキン。ターナーは、空気の湿度にまで迫るような勢いで風景表現を深めていきます。その真価がなかなか理解されない状況に、青年ラスキンは敢然と立ち上がりました。素描とペンとを武器として。
1848年、画学生ら7名が「ラファエル前派同盟」を結成。あえてルネサンスの巨匠「ラファエロ」の名を出すことで、伝統的な絵画の手法に盲従することに疑問を投げかけたのです。未熟な、しかし熱い若者たちの運動に、すぐさまラスキンは呼応し、擁護の論陣を張りました。それはやがて、現実の交友へとつながっていきます。
良く観察して描くべきだというラスキンの主張は、「ラファエル前派」と名乗ったグループ内にとどまらず、同時代の様々な作品の背後に息づいています。対象の細部までを捉えようとする誠実さが、ものの持つ本質を浮かび上がらせるとでもいうように。
バーン=ジョーンズは初期の「ラファエル前派」に影響を受けた世代の一人。ロセッティに師事し、ラスキンの助言を受け、後には物語性と象徴性が溶け合うような作風に到達します。彼の創作の原点は、仲間たちとの共同作業でした。なかでも、モリスとの共作は人生の最期まで途絶えることなく続けられます。
ラスキンの理想を、仕事によって現実のものとしたのがウィリアム・モリスでした。限られた層に向けた芸術よりも、世の中のためになる製品を生みだす職人であろうとし、「デザイン」という新しい地平を切り拓きました。ラスキンからモリスに受け継がれた手仕事を大切にする考えは、その後、アーツ&クラフツ運動として広がっていきます。
| 個人 | 団体 | |
|---|---|---|
| 一般 | 1,000円 | 800円 |
| シニア | 700円 | 500円 |
| 大学生 | 400円 | 200円 |
| 高校生以下 | 無料 | 無料 |
| 前売り (Pコード769-561/Lコード86692) | 600円 | |